歯科ブログ
歯科治療の「内科的アプローチ」
おはようございます、八木歯科です。
久しぶりの今回は、歯科での「内科的アプローチ」についてご説明いたします。
歯を抜くことはもちろん、インプラントを埋め込む、歯を削る、歯の神経をとる、など私たちの治療は小外科的なものです。
例として上のX-rayをご覧ください。左側の歯は既に他の医院にて神経を取り、詰め物がされています。そして右側の歯には大きな虫歯が!しかも2つに分かれている根の右側の根の周りも黒く、私たちは「歯根膜炎」を起こしている、と診断します。実際、歯に物が当たると痛く、また冷たいものが強くしみる、とのことでした。通常このような場合歯科医師は、この歯が「親知らず」であることもあり、抜歯、もしくは少なくとも神経を取り、詰め物、できれば再発を防ぐために全体を被せる事を考えます。しかしこの患者さんも歯を抜かず、最小限での治療を希望されていました。
さてX-rayに戻りましょう。左側の歯との間の黒い部分は虫歯そのもの。歯の中央部にも同様に黒い部分がありますが、こちらは歯の神経、血管が入っている部分です。その2つの黒い部分の境界部分をよく見ると少しグレーの壁が見えるでしょうか?
外側の黒い部分は虫歯による空洞、あるいはフニャフニャになった部分。グレーの壁は少し硬い部分ですが、虫歯菌に感染しているでしょう 🙁
従来は感染部分も完全除去が当然でしたので、この歯の場合も神経の入っているスペースに貫通し、神経を取らなければなりません!:(、ということになっていたでしょう。
ここで、これからは「内科的アプローチ」を並行して行います。完全にフニャフニャの部分はやはり除去しますが、グレーゾーンは保存し、その上に直接に抗生剤を置き厳重に仮詰めし外界と遮断し密閉します。このことによって、感染部分の多くの部分を完全に無菌化でき神経の痛みも無くなります。また感染部分も時間と共に「再石灰化」といい、再び健康な硬い歯に戻る!という経過を取ります。
歯の内部の治療自体はもっと早く、ほぼ1〜2回の抗生剤の添付で完了。痛みがなくなった事を確認し、あとは詰め物や被せ物をして完了です。
この「内科的アプローチ」はケースバイケースですが、虫歯以外にも一度治療したのに痛くなった歯、既に神経をとる治療もしたのに又痛くなった歯、奥歯のように根が数本あり、その分岐部に炎症を繰り返す歯、状態にもよりますが歯周病でグラグラうごく歯にも有効なケースがあり、今後は神経を取ったり、歯を抜くケースが少なくなるのでは?、と期待しています。
薬を飲むことに抵抗のある方も、従来のように歯の中にだけ薬を入れる。そして従来以上に厳密に密閉しての治療は安心ではないでしょうか?
疑問等ありましたら、なんでもご質問ください。
この治療法は実は以前からあったのですが、薬剤の保管条件が厳しく、また治療にもより厳密さが求められるため、まだまだ普及していないようです。
今後も患者さんのメリットが大きく、また確実性の高い治療法をどんどん取り入れていきます。